署名した遺産分割協議書を無効にできる?|行政書士が分かりやすく説明

今回は署名・押印してしまった遺産分割協議書を「無効」「取消し」できるのか解説します。

遺産分割協議書とは

「遺産分割協議書」とは被相続人の残した遺産を相続人間でどのように分けるかを協議により決定して書面にしたものです。

遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。

1人でも参加していない場合は「無効」になります。

相続人全員で合意した証として各相続人が署名・押印(実印)して印鑑登録証明書を添付します。

全員の署名がない時は「無効」です。

署名・押印したけど無効にしたい

1度は納得して署名・押印したけどやっぱり納得できない場合でも「遺産分割協議書」を無効にする事はできません。

「面倒だしこれでいいか」と署名してしまうと後から変更はできませんので署名する時はしっかり内容を確認してから署名・押印をしてください。

ただし例外的に「遺産分割協議書」が無効になる場合があります。

以下で説明します。

例外的に無効になる場合

1人の相続人が「無効」にしたいと考えても難しいですが以下のケースでは例外的に「無効」になります。

例外的に無効になるケース

  • 相続人全員の署名・押印がない。(相続人全員が参加してない)
  • 遺産分割協議をやり直しに相続人全員が合意する時
  • 後から多額の遺産が見つかった時
  • 「意思能力」の無い相続人がいた

これらの場合は「無効」または「無効」になる可能性があります。

相続人全員の署名・押印がない

「遺産分割協議」は相続人全員の参加が必須条件です。

相続人全員の署名・押印がない時は遺産分割協議を相続人全員で行っていない事になります。

この場合は「無効」になります。

遺産分割協議のやり直しに相続人全員が合意するとき

1人で「無効」を主張しても「無効」にする事はできません。

しかし「相続人全員がやり直しに合意」する時は「無効」となり遺産分割協議をやり直す事ができます。

1人でも合意しない相続人がいる時はやり直しはできません。

後から多額の遺産が見つかった時

故意に隠して訳ではなく本当に後から遺産が見つかった時も遺産分割をやり直す場合があります。

あとから見つかった遺産が少額の場合は見つかった遺産について遺産分割協議をします。

見つかった遺産が多額だった時はやり直す事もあります。

「見つかった多額の遺産」が初めから分かっていれば協議の内容は全く変わってしまうような場合です。

ただし「見つかった多額の遺産」のみを遺産分割協議する事に相続人全員が納得していればやり直す必要はありません。

意思能力のない相続人がいた

「意思能力」がない人とは精神病・認知症の人などです。

「意思能力」とは自分で判断・認識をする能力です。

判断・認識する能力がない相続人がいる場合は家庭裁判所で成年被後見人を選任してもらいます。

選任された「成年被後見人」を遺産分割協議に参加させなければなりません。

取消しを主張できるケース

今までご紹介したケースは「無効」の場合です。

ここで紹介するのは「取消し」できるケースです。

無効と取消しの違い

【無効】

無効になる事由が存在すると対象の遺産分割協議書は「はじめから効力をもちません」

【取消し】

この場合は「取り消されるまでは有効」であるというのが違いです。

取消しを主張する人がいる時に所長が認められて「取消し」になると遺産分割協議の成立した時に遡って「無効」になります。

「取消し」が認められれば遡って「無効」になるので同じ様に感じるかもしれません。

「無効」は主張する人がいなくても事由に該当すれば「無効」です。

対して「取消し」は主張する人がいなければいけません。

主張する人がいなければ遺産分割協議書の内容は「有効」になる点が違います。

取消しできるケース

  • 騙されて署名・押印した
  • 脅されて署名・押印した
  • 遺産について大きな勘違いをしていた。

騙されて署名・押印した

他の相続人に騙されて署名・押印した時は「取消し」する事ができます。

【例】

本当は遺産が3000万円あるのに2000万円と言われて署名・押印した時

こんな時は「騙されて署名・押印」していますので取消す事ができます。

脅されて署名・押印した

他の相続人から脅されて署名・押印した場合も「取消し」する事ができます。

【例】

遺産分割協議書にサインしないと危害を加えるぞ!

と言われて署名・押印した。

こんな時は「取消し」する事ができます。

遺産について大きな勘違いをしていた

遺産の評価の価格等について大きな勘違いをした時も「取消し」できる可能性があります。

【例】

自分の取得した不動産が2000万円の価値があると思っていたが実際には100万円の価値しかなかった。

こんな勘違いをして署名・押印した時は「取消し」できる可能性があります。

最後に

いかがでしたか?

自分1人が納得できないから「遺産分割協議書を無効」にする事はできません。

ただし今回ご紹介したケースでは「無効」「取消し」できる可能性があります。

参考にしてください。

投稿者プロフィール

【行政書士】【相続診断士】 長谷川健治
【行政書士】【相続診断士】 長谷川健治
名古屋市天白区平針の【遺言・相続専門】行政書士アフェクション法務事務所の代表行政書士です。
【相続診断士】の資格も保有しております。
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